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IPCC AR4

今年の2月〜5月にかけて、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)から、第四次評価報告書の各部会の「政策決定者向けの要約」が発表された。
1990年の第一次評価報告書(頭文字をとってFARと呼ばれる)、1995年の第二次評価報告書(SAR)、2001年の第三次評価報告書(TAR)に続き、6年ぶりの新・評価報告書になる。ちなみに、今回の報告書は第一次評価報告書との混同を避けるため、AR4と呼ばれる。
評価報告書(Assessment Report)という名前が示す通り、この報告書は新たな研究成果や科学的知見を発表するものというよりは、既存の気候変動に関する研究を包括的に評価した上でまとめて提示するものである。温暖化に関する科学の国際的な共通理解の地点を示すという意味で、この報告書以上に重要なものはおそらくなく、次の新しい報告書が出るまでの5〜6年間のスタンダードになっていくであろう。
正確に言うと、2月〜5月に発表され、メディア等でもとりあげられたのはIPCCの各部会による「政策決定者向けの要約」(Summary for Policy Makers、通称SPM)と呼ばれるもので、名前の通り、各部会の報告書の要約にあたる部分である。
では要約ではなく本体はどうしたのかというと、現在のところ、第一作業部会と第三作業部会の報告書の本体は、SPM発表後に既に公表されたが、第二作業部会の本体はまだのようだ。本体が公表される前に要約が発表されるというのは変な感じもするが、これは別に内容の詳細について議論があるからというよりは、編集作業がまだ終了していないという理由によるので、要約の内容が後で変更されるということはない。
報告書の本体はとても分厚く専門的で、一部の熱心な人や研究者を除けば、多忙な政策決定者が全部読むような量ではないので、SPMの果たす役割は極めて重要だ。このため、SPMの策定は、各国から集まった科学者および政府代表が、文字通り一行一行、確認をした上で策定する。この「政府代表も」参加しているという点が実はミソで、この特徴があるために合意が難しくなる側面もあるが、逆に、そうであるからこそ、この報告書は国際交渉においても科学の共通理解の地点としての基盤になりえる。
この報告書(のSPM)の発表はメディアでも大きく取り上げられ、政府やその他の関連機関もいろいろな解説やらコメントやらを出している。日本では、中でも環境省は特に力を入れており、サイト内に特別なページを用意して、各政府関連機関が準備したSPMの翻訳や、概要を写真や図表を用いて解説したプレゼンテーションなどを掲載している。また、全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)も、IPCCで使われている一部の代表的な図表を日本語化し、普及啓発活動において使用して貰えるように、「すぐに使える図表集」に追加している。英語が得意でかつこの分野に詳しい人であれば、Real Climateの関連記事がとても参考になるであろう。
そこへ来て何を今更、かもしれないが、これから数回に渡って、IPCCのSPMについて少しコメントを書いてみようと思う。私は科学者・研究者ではないので、内容の分かりやすい解説をするつもりはないが、SPMが示しているものの意味を、自分なりに解釈した結果を提示できればと思っている。
SPMは、3つの作業部会それぞれから出ており、本来は、順番としても温暖化の仕組みや基礎となる科学を扱った第一作業部会から始めていくのが順当なのだろうが、ここではちょっと順番を変えて、第二作業部会から始めてみたいと思う。詳しくは次回から。