読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

北村慶 『「温暖化」がカネになる:環境と経済学のホントの関係』 PHP研究所 2007年

読書 温暖化

下の写真を見ていただければ分かるが、真っ黒い表紙に赤字でこのタイトルである。パッと見で目を引くのは良いのだが、最初、これは「トンデモ本」ではないかと疑ってしまった。おそらく、同じように敬遠してしまった人も多いのではないであろうか。

「温暖化」がカネになる

「温暖化」がカネになる

しかし、読んでみると、意外にも(!?)中身はまともである。

第1章は、温暖化の仕組みや現状の京都議定書をめぐる状況、そして日本の温暖化対策の現状などを紹介しており、いわば基礎説明がされている。第2章が、元々金融界の人間である著者の本領発揮で、排出権の金融商品化と、その意義についての説明がある。第3章は、再び根本的な問題に立ち戻り、資本主義というシステムとこの地球温暖化という問題の関係についての考察が加えられている。

この本を面白いなと思ったのには2つの理由がある。

1つは、著者の出身が金融界であり、その視点から、昨今の「排出権取引」議論について冷静な議論がされていること。

排出権取引については、最近の原油価格の高騰やサブプライム・ローン問題とも相まって、次の「マネーゲーム」になるのではないかという議論がある。

それらの問題が世界経済に与えているインパクトを踏まえれば、そうした懸念が出てくるのはある意味当然のことではあると思うのだが、しかし時として議論が行きすぎる場合がある。たとえば、取引は実需のみに限って、金融機関等の関与を排除すべきという議論もたまに見かける。リスクを管理するという意味においては、金融機関の役割を否定するべきではないし、原油高にしてもサブプライムにしても、金融機関が関わったこと自体が問題であるのではなく、そもそもファンダメンタルズの反映であったり、そのような行為が可能であったルールに問題がある。

こうしたマネーゲーム議論が提示されるのは、多くの場合、「ものづくり」を日本の基礎と考える人たちの善意の懸念からであり、その意味では真剣に検討すべきではある。しかし、金融という分野が果たす役割を否定するだけでそれが解決できるわけではない。金融市場でおきたような失敗が、排出権市場においても起きるかどうかとう問題については、その道の専門家に入ってきてもらって議論をしなければならない。その意味で、こうした形で著者のような人がこの問題の議論に参入してきているのは喜ぶべきことだと思う。

2つ目は、この本のタイトルにもなっている「金もうけで地球環境を守る」という発想である。このポイントは、本書の基本的なテーマとして何度か本文中にも出てくる。たとえば、

「・・・「環境保全」に対する資金供与は、イコール慈善事業であるべきであり、金儲けと結び付けることを考えるなんて汚らわしい—それが、一般的な受け止め方でしょう。
 つまり、日本においては、「環境に優しいこと」は、金儲けとは対極にある概念だと思われているのです。
 しかし、筆者はこうした人々の善意に頼るだけでは、地球環境は救えないところまで来ていると考えています。
 そして、人々の欲望を直接刺激し、その結果として地球環境が守られるような仕組み—すなわち、市場原理や金儲けの仕組み—をもっと大々的に導入することでしか、地球を守ることはできないとも考えています。」(pp. 170-171)

というような具合である。

おそらく、環境NGOで働いている私のような人間が、こういうのがよいというと、反感を買うか、もしくは誤解を招くかのどちらかをすると思うが、私は「金もうけにつながること」がこと温暖化問題の解決にあたっては極めて重要だと思っている。

温暖化問題は、根本的には「誰か悪い会社や人がいて、その人たちの行動を行動を矯正すれば解決される」という類いの問題ではない。また、善意ある一部の人たちの先進的な行動のみで解決できるような問題でもない。この問題は、究極的には、化石燃料をエネルギー源としている私たちのエネルギー社会の構造に根ざしている。これを解決しようと思ったら、社会の仕組みそのものの中に、この問題の解決へ向けての方向性を植え付けなければならない。資本主義を基礎とする現在社会にあってそれは、とりもなおさず、解決の方向に動いた人や会社が得をする、すなわち儲かるようにしなければならないということを意味する。そのことが、資本主義自体のあり方の変革にも、いずれはつながっていくだろう。

誤解の無いように書いておくが、私自身は別に温暖化でカネを儲けたいと思っているわけではない。もしそのつもりなら、職業選択の時点で致命的なミスを犯したことになる。

「温暖化がカネになる」とは、語弊があるし、誤解も生むだろうが、この問題の解決を真剣に考えるならば、一度向き合うべきテーマであると思う。