韓国が温室効果ガス排出量削減に関する中期目標を来年中に設定することを宣言

先週の21日から、ガーナのアクラにおいて国連気候変動会議が開催されている。正確には、第3回目のAd hoc Working Group on Long-term Cooperative Action (AWG-LCA)と、第6回目(の前半)のAd hoc Working Group on further Commitments for Annex I Parties under the Kyoto Protocol (AWG-KP)という2つの会合が開催されている。

今回の会議では、そもそも大きな決めごとの期限があるわけではないので、交渉上、それほど大きな進展が期待されているわけではない。AWGLCAの会合の方では、セクター別アプローチに関するワークショップが開催され、日本政府のプレゼンテーションなどものあったし、また、AWGKPの方では、京都メカニズムや森林吸収源の今後についての議論も行なわれているので、関係者にとってはそれなりに興味深い会合ではある。

ただ、その内容以上に目を引くニュースが出てきた。

それが、標題にある韓国の宣言である。ロイターが報じているところによると、2020年までの温室効果ガス排出量削減中期目標を来年にも発表するらしい。そのこと自体は、実は先月の主要経済国首脳会合(MEM)の際に、既に、李明博大統領が他国の首脳に対して宣言しているというのだから(そういう報道はなかったと思うけど)、結構、確かな話らしい。現時点では、その目標はBusiness As Usual (現状の政策がそのまま推移するとした場合の将来の排出量)から減らす目標になるということだが、どのくらい野心的な目標になるのかが見物だ。

先月末には、すでに南アフリカが「ビジョン」として、同様の中期目標を発表している南アフリカ政府が発表している文書によれば、Government's Visionの1つとして、

4. GHG emissions must peak, plateau and decline. This means it must stop growing at the latest by 2020-2025, stabilise for up to ten years and then decline in absolute terms.

という目標が書かれている。2020〜2025年の間に、安定化させ、減少に転じさせる、ということだから、近年の実質GDPが5%台の国としては、けっこう野心的な目標であるといえよう。

こうして、新興の途上国が中期の目標を掲げている背景には、現在進んでいる温暖化交渉の中でなかなか中期目標をはっきりとさせない国々(日本や、新政権後のアメリカ)に対してプレッシャーをかけると同時に、あらかじめ自らにできる範囲を明確化することで、次期枠組みの中で、自分たちに求められる削減約束の形をある程度自己規定したいという意図があると考えられる。

日本政府としては、先の福田ビジョンで来年中に中期目標を発表するとしているが、あんまりのんびりしていると、リーダーとは見なされない上、来年の交渉で不利になる可能性すら出てくる。日本政府や関係者の間では一般的に「先にカードを出すバカはない」と考えている人が多いようだが、その出さない戦略にこだわった結果が前回の京都議定書の終盤でアメリカ・欧州間での合意であることを考えると、私は個人的にはあまり賢いとは思えない。