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国連気候変動ボン会議(2009年3月29日〜4月8日)

温暖化 国際交渉

出張から帰ってきてから、中期目標関係の仕事でバタバタしていたら、あっという間に1ヶ月たってしまった。今年は自分が言った国連会議についてはきちんと何か感想を書くのが隠れた目標だったのに、のっけからすでにそれを破ってしまった。

もはや今更の感もあるけれど、次の6月の会議も迫ってきているので、ちょっと復習がてら書いておく。次回の6月は私は行かないのだけれど。

コペンハーゲンへ向けての怒濤の1年間の開始

3月29日から4月8日、ドイツのボンにおいて第7回AWG KPと第5回AWG LCAが開催された(「AWGって何?」という人はずっと前に書いた「ポズナン会議の結果について」をご参照頂きたい)。

今年12月に開催されるコペンハーゲンでのCOP15・COP/MOP5へ向けてのラストスパート1年の最初の会議である。

巷ではすでにもうコペンハーゲンでの将来枠組みの合意は無理という意見もちらほら出始めているが、個人的にはまだまだあきらめるには早いと思う。しかし、今回の会議の成果の少なさを見ると、確かにそう弱気になる気持ちが分からないでもない。

2007年12月のバリ・ロードマップの採択以降、2009年末(つまり今年の12月)のコペンハーゲン会議での最終合意を目指して、将来枠組みに関する交渉が行われた来た。昨年1年は、「交渉」というよりは「意見交換」に近く、今回からはをれを「交渉モード」へ転換することが求められていた。

しかし、結果から言うと、確かに昨年の雰囲気よりはマシな部分もあるが、進展があったかといわれるとあんましなかったと言わざるを得ない。

焦点となった「先進国全体」の目標

今回の会議で最も紛糾したのは、AWG KPにおける「先進国全体」の目標についてであった。

2006年から始まっているAWG KPの最終目的は先進国各国の排出量削減目標を決めることであるが、これへの前段階として、先進国全体の目標について、ある程度の結論を出すというのが今回の会議の本来的な予定であった。

しかし、AWG KPの議論というのは、基本的には「京都議定書の締約国」による議論なので、アメリカは抜きである。

このため、ここでの議論の結果にアメリカは拘束されない。したがって、「アメリカ抜きのこの場で議論をすること自体に意味がない」という意識が先進国には強い。また、途上国が排出量削減にどのように参加するのか(目標を持つのかどうかも含めて)という点については、こことは別のAWG LCAの場で議論がされることになっているため、AWG KPの側だけで先進国全体としての目標を決めるわけには行かないという思いも先進国の側にある。

こうした考え方は、程度の差はあれ、ほとんどの先進国に共有されているが、特に強くこの点を主張するのは、EUやのルゥエー以外の主要先進国、特に日本とオーストラリアである。EUやノルウェーがこの点を無視するわけではないが、日本やオーストラリアに比べると主張はやや弱い。

こう書くと、日本やオーストラリアの言うことに理がありそうだが、話はそう単純ではない。

途上国の側からすれば、もうこの議論に過去3年も話しあってきたし、先進国がリードをとって削減をしなければならないのは既に合意事項。しかも、先進国の中には日本やカナダのように、京都議定書の目標達成すらおぼつかない状況の国々もある。その状況の中、今更、「あなたたちもやる気を見せてくれないと、まだそれは言えません」では、途上国の側としては、次期に自分たちが何をできるかの議論を本格的にする気にはなれない。せめて、先進国「全体」でどれくらいやるつもりがあるのかくらいは見せてくれ、というのが正直なところだろう。

結論から言うと、今回の交渉では、この辺については決定が出なかった。詳しく見たい人は、AWG KPの報告(FCCC/KP/AWG/2009/5)の7ページから8ページ(第23段落〜第32段落)を見て欲しい。

一見して分かるが、数字らしき数字がない。びっくりするくらい何もない結論文書である。

残念だが、今回はこの肝となる部分については合意ができなかった。

アメリカの「再参加」

ただ、悪い話ばかりでもなかった。

やはり、一番のグッド・ニュースは、アメリカが本格的に交渉に戻ってきたことだろう。

今回、アメリカは、トッド・スターン気候変動特使を代表として送り込んできた。居たのはほんの1日だけだが、他国で言えば閣僚級にも匹敵する彼を、今回のような比較的重要性の低い会議に送り込んできたというのは、オバマ政権のやる気の表れといえる。

そのトッド・スターン気候変動特使のスピーチは、ここから聞くことができる。アメリカの発言は、前半の最後の方、インドネシアバングラデシュの発言の間。

スピーチ原稿はここで見ることができる(ここも英語のみ)。

前ブッシュ政権の交渉態度には誰もが絶望していたので、会議は歓迎ムード一色だった。

ただし、今回、アメリカはまだ政権が出てまもないということもあり、自国のポジションがまだ明確に定まっていない状況だった。それゆえ、どのような意見にも極めてオープンに、「ご意見拝聴」モードで接していたところがある。

でも、次回6月の会合からはそうもいかないだろう。アメリカがポジションを固めるにつれ、ハード・ネゴシエーターとしてのアメリカの顔が徐々に出てくるに違いない。そうすれば、コペンハーゲンまでの交渉が、大変なものになることは容易に想像がつく。

ユースが吹き込んだ風

アメリカの「再参加」以外で印象に残ったものとして、ユースの読み上げた声明がある。

「2050年、貴方は何歳ですか?」と問い掛けることで、この問題に関する今の決断が次世代に大きな影響を与えることを、その当事者として指摘していたのが印象的だった。

また、アメリカ、EU、オーストラリア等が発表している中期目標については、「正直言って、(全然足りなくて)バカみたい」と啖呵を切る場面もあるなど、ユースならではのメッセージの出し方が光っていた。

国連交渉は固い話に凝り固まりがちだが、時折、こういうユースの全く違った視点が入ることによって、交渉の雰囲気に新しい空気が入ることもある。各国代表が時折使うユーモアと同様、国連交渉における大事な円滑油の1つだ。

ユースのスピーチも、ここで聞くことができる

最後の方「sustainable markets foundation」がそれに該当。

次回のボン会議

次回の国連会議は、6月1日〜12日で再びドイツ・ボンで開催される。次回は、AWG KPおよびAWG LCAの場の双方で「交渉テキスト」と呼ばれる、最終合意文書の下書きの下書きみたいなものが出てくる。これが出てくると、具体的な文言に関する議論が始まるので、議論はにわかに現実味を帯びる。AWG KPについては、既にその文書が発表された(FCCC/KP/AWG/2009/7FCCCC/KP/AWG/2009/8)。

おそらく、本当の意味での「交渉モード」に入るきっかけになる会議といえるだろう。