国連気候変動ボン会議IIの閉幕
予想以上に早い閉幕
このネタは、明日にならないと書けないのではないかと思っていたのだけれど、意外や意外、日本時間ですら12日の日付を超える前に、ドイツ・ボンで会議が閉幕したようだ。
公式には国連会議は18:00までに終わることになっているのだが、それが守られることは滅多に無く、特に会議最終日ともなれば、日付が変わってもまだ決着がつかないというのは、半ば悪しき慣習化している。
にもかかわらず、今回は、最終日がきちんと時間以内に終了している。
ただし、これは決して、交渉が順調に進んだからではないようだ。
Lドキュメントから窺える進展の少なさ
むしろ、現段階ではこれ以上の進展を示すことは難しいため、早く終わってしまった、というのが実情のようだ。
それを窺い知ることができるのが、AWG KPのLドキュメントの内容だ。
“Lドキュメント”というのは、国連文書の形式の1つで、簡単に言えば、会議の最後の総会で、各議題の結論を採択する時に使う結論文書の下書きである。各議題について結論は採択されるので、議題毎に用意されるのが普通である。
文書番号(ドキュメントシンボル)の最後に、”L.xx" という印が付くので、そう呼ばれる。
あくまで、「下書き」であり、採択されるまでは正式な文書ではない。でも、よほど交渉が難航していない限り、総会に出てくる前にそもそも議論・交渉は終結させておくのが慣例である。したがって、総会の直前に準備されるLドキュメントは、だいたいがそのまま採択される。でも、微修正が入ることもたまにはあるし、本当に大変な交渉の時には、総会の場で大きな変更が起きることもある。
さて、今回、AWG KPで出ているLドキュメントの中で最も重要なのは、先進国の削減目標に関するFCCC/KP/AWG/2009/L.10である。
ここに至るまでにどういう交渉があったのかが分からないと行間を読むのは難しいのだが、ざっと見た限り、かなり内容に乏しい。今回の会議では、大きな進展がなかったことを示している。
FCCC/KP/AWG/2009/L.10の中身
L.10の中身をざっと見てみよう。
パラグラフ1から5までは、基本的に真新しいことは何も書いていない。今回やったことを事実として書いているだけである。
パラグラフ6には、今後の交渉の進展を促すために、議長に己の責任おいて3つの事項についての書類を用意せよと指示している。3つの事項とは以下である。
パラグラフ7は、議長が用意するこの文書の性質についていくつか条件が付けられている。端的に言えば、これは別に国々が合意したものではなくて、コペンハーゲンでの合意を予断するものじゃありませんよということだ。
パラグラフ8では、森林吸収源に関するデータを各国に出せと命じている。
そして、最後のパラグラフ9では、上記の議長の文書は、会合毎に改訂されなければならないということが書かれている。そして、その改訂では、その都度で出てきた色々な意見を取り入れるようにと書いてある。
こうして全体の内容をざっと見てみると、書かれている中身そのものがダメということではないのだが、明らかに、今回の結論としては足りないものがある。それは、先進国全体の削減水準に関する結論である。
個別の国々の削減目標は、コペンハーゲンでなければ決まらないだろうというのは分かるのだが、先進国「全体」の削減幅は、そろそろきちんとした形で示さないと、途上国からの積極的な交渉態度を引き出すことはできないだろう。
日本は、あまり野心的でない中期目標を掲げたことで、この流れは決して前向きには貢献できていない。
先進国の交渉官の立場からすれば、先に先進国だけのコミットメントにつながるような結論はさけなければならず、コペンハーゲンの最終局面で全てが決まればいいと思っているので、この点について進展がないのは悪いことではないと思っているのだと思う。
しかし、その交渉姿勢では、おそらくこのまま膠着状態が続き、先進国が議論したいと思っている「途上国の次期枠組み内での削減行動」には議論が辿り着けない恐れがある。
そろそろ焦るべき時期に来ているのだが・・・。
先進国各国の目標とそれが意味するところの分析
ちなみに、現時点までで先進国各国が宣言している目標は、FCCC/KP/AWG/2009/MISC.13/Add.1に整理されている。
そして、そうした各国の目標を元に、それが先進国全体として、そして世界全体としてどのような意味を持つのかということに関しては、科学誌Natureのオンライン・レポートに下記の記事が掲載されている。
これによると、現時点の各国目標をベースに計算すると、先進国全体の目標は、8〜14%程度にしかならないという。450ppmの安定化濃度に必要だとされている「25〜40%」からはかけ離れている。