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イギリス・ゴードン・ブラウン首相のコペンハーゲンへ向けてのスピーチ

海外事情 国際交渉 温暖化

同じようなタイミングでもう1つ重要な動きがあった。

イギリスのゴードン・ブラウン首相が、コペンハーゲンへ向けての方針を発表するスピーチを行った。

スピーチの大半は、これまでのEUの路線を踏襲する内容なので、実はそれほど新しい内容はない。

たとえば、世界全体が目指すべき方向性については以下のように述べている。

We cannot in good conscience plan for the world to exceed that limit. So our goal must be “no more than two degrees”.
We know this means stabilising greenhouse gases at around 450 parts per million. And this in turn means that global emissions must peak no later than 2020 and be cut by at least half on 1990 levels by 2050.

地球の平均気温上昇を2℃未満に抑えること、それが安定化濃度でいえば450 ppmに相当することなどは従来通りであり、この辺はNGOが主張しているラインとも同じだ(もっと温度上昇は低く抑えなければならないと主張しているNGOもも勿論あるけれども)。

それから、2020年までに排出量のピークを持ってきて、2050年までに少なくとも排出量を1990年水準から半減しなければならない、というのも、これまでからそれほど変わっていない。

また、先進国としては、

And to leave room for the growth of the developing world, the developed countries need to reduce their own emissions by at least 80% by 2050.

ということで、80%の削減が必要だというのも、EU共通のラインである。

しかし、今回新しい内容としては、以下の途上国に対する資金援助に関する下りがある。

まずODAに関して、次の2つの箇所。

I can therefore announce that as part of a comprehensive international agreement in which all countries play their part, the UK will contribute our fair share to climate financing separately from and in addition to our promises on aid and the Millennium Development Goals. That means that even when we have achieved our 0.7% target of national income we will also be contributing additional finance on top. I believe that additionality to aid in this way is an important principle to which all developed countries should commit.

So I propose that, while some climate finance can come from official development assistance - where it clearly meets both poverty reduction and adaptation or mitigation objectives - a ceiling should be placed on this. In the UK we will limit such expenditure to up to 10% of our official development assistance. And we will work towards this limit being agreed internationally.

前者は、MDGsミレニアム開発目標)の達成とは別に/加えて、気候変動にかかわる途上国支援を行う意志があること、即ち、ODA総額をGNP比の0.7%目標以上にするという目標を達成した後も、それに追加して援助を提供する用意があることを述べている。

そして後者は、気候変動への対応と貧困削減が両方一辺に解決できるようなケースももちろんあるので、そういう場合はODAを使うこともやぶさではないものの、それには一定の制限も必要である(貧困削減から資金源を奪ってしまわないために)。そして、その制限として、ODA全体の10%という制限を提案する、ということを述べている。

以前から、気候変動にお金が回ることで、従来の貧困削減等への資金源が減るのではないかという懸念が少なからぬ開発系NGO等から挙がっていたこともあるので、これらだけでもなかなかに興味深い内容ではある。

だが、最も重要なポイントは次の箇所である。

So today I propose we take a working figure for this purpose of around $100 billion per annum by 2020. I believe the mechanisms I have set out are capable of raising at least this sum - and it is a credible number against which countries can develop their plans.
It would come, as I have set out, from a combination of the carbon market, new and additional sources of predictable finance and a limited amount of development aid. And while the figure of $100 billion would be for 2020, funds would need to become available from 2013.

先進国から途上国への資金援助の総額として、2020年までに年間1000億ドル(約9兆5千億円)を提供するべきだという提案をしている。

先進国の側から、これほどはっきりした形で、資金の流れの規模を定義づける提案が出てくるのは初めてだろう。

国連の文脈では、ノルウェーが割当量(AAU)のオークションという提案を出していたり、スイスが国際環境税の提案を出していたりするが、あれらはいずれも仕組みの提案に重きがあり、このように金額の水準に重きを置いた提案は初めてであろう。

その意味で、重要な提案である。

ただ、もちろん、これは、イギリスが単独で行うわけでもなく、また、公的資金だけで行うわけでもないようだ。その中には、イギリスが好きなカーボン・マーケットからの資金というのも含まれることが明示的に示されているので、公的資金だけでの資金移動だけではなく、民間資金の移動も含めて、ということかもしれない。