iPad使用感

iPadの使用を開始して2週間ばかしたったので、ここいらで少し使用感をまとめてみる。これから購入を検討している人の参考にちょっとでもなれば幸い。

最初に全体的な評価を書いておくと、元々、私はiPadを「通勤の最中に様々な文書、特に『印刷するのはもったいないけど、かといってPC上で読むのはちょっとつらいかも』という文書を読んでチェックするのに使う、というのが大きな目的だった。この目的は、下記にあるように充分果たされているので、現時点では満足している。

巨大な携帯?

iPadを買った」というと、「携帯に加えて持つ意味があるの?」と聞かれることがある。正直、携帯で満足してれば無理に買う必要もないかもしれない。「これからの人々にとって必須な機器ですよ」という気はしない。

ただ、まだうまく表現できないが、携帯には無い使い方が生まれつつあるのは確か。電子機器の新しい地平を開きつつある。

それは、電子書籍としてもそうかもしれないし、携帯には無い大きさ、ノートPCにはない手軽さを活用して、病院で患者向けの説明に使われたりし始めていることからもうかがうことができる。

海外ドラマ好きの人であれば、CSI NYで、CSI職員が同僚への説明によく使っているパッド型の電子機器があるのを見たことがあると思う。これは、現実にもiPad以前から存在するれっきとした機器なのだが、ああいう使い方のイメージがあると思ってもいいかもしれない。

ソフトウェアキーボードの使い心地はまあまあ

買う前から気になっていたことの1つが、ソフトウェアキーボードの使い心地だ。

iPhoneよりはマシだろうと思っていたけれども、どれくらい使えるものなのか気になっていた。

で、2週間使ってみて感じたのは、良くも悪くも「iPhoneMacBookの間」というのがぴったりだということ。

iPadを横にしたときのキーボードは、両手を使ってのタイピングができるので、通常のPCと似たようなタイピングができる。しかし、物理的にキーボードにタッチできないということのハンデは大きく、ミスタイプが絶対に生じる。これが、そこそこイライラさせられる(笑)。でも、iPhoneよりも圧倒的に楽なのはたしか。

ただし、これはあくまで「iPadを横にして置く事ができる場所がある」という前提付き。

たとえば、電車の中で立って何か文書を書こうと思うと、この条件はクリアできない。立ちながら両手がフリーであれば、片手で持って、片手でタイプということもできる(これは、片手だけでiPhoneをタイプするよりは楽)が、それは、けっこう厳しい。

しかも、座れたとしても、iPadは、画面とキーボードが同じ平面なので、角度の調節が意外に難しい。このため、TUNEFOLIO for iPadみたいな角度を調節することができる書見台みたいなケースはけっこう重宝する。

逆に、片手だけしか使えない状況だと、iPhoneのように片手で親指が届く範囲でタイプということができないので、事実上タイプは不可能だ。

「当たり前じゃん」と言われるかもしれないが、結構大事なことだと思った。

電子書籍リーダーとしての評価はまだつけられない

話題のiBookstoreは、アプリiBooksを入れて、そこからアクセスする形になる。

ソフトウェアはよくできていると思うのだけれど、残年ながら現段階ではなんとも言えない。日本の出版社が対応していなくて、日本の本はあんまり読めないからだ。英語の古典は現段階でも読めるのだが、まだ試す気にはなれない。

ただ、出版社等が個別の専用アプリを用意して、対応しているところもある。マガストアでは、Mac Fanなど、いくつかの雑誌が読めるし、クーリエジャポンのように、個別の雑誌で出しているところもある。書籍でも、数学ガール HDのように、個別にアプリとして出しているものもあるので、全く読めるものがないというわけでもない。この辺は、iPhoneの時と同じだ。

さらに、Kindleもあるので、洋書を読みたい人はけっこう充分だったりする。

むろん、好きな人は、いわゆる「自炊」をして、自分で本等をスキャンしてPDFにして読むんだろうが。

ただ、個人的には、どれもまだ「とりあえずあったから読んでみた」感じなので、本格的な読書体験はまだしてない。

だから、本格的な意見は言えないのだけれど、電子リーダーとして気になるのは、やはり目が疲れる事。

Kindleなどは、おそらく部屋が暗かったりすると読めないのだろうが(持ってないので良く知らないけど)、その分、目には(多少)優しい構造になっている。これに対しiPadは、カラーで見えるし、暗くても、ディスプレイ自体が光を発しているので当然読めるのだが、やっぱり長時間は疲れる。ちょっとした報告書のチェックとかはともかく、長い小説をずーっと読むのはひょっとしたら辛いかもしれない。

個人差はもちろんあるかもしれないけど。

新聞は今後の対応に期待

新聞がそのまま紙面ぽく読めるといいな〜と思っていたのだけれど、対応しているところは意外に少ない。

一番まともに対応してくれているのは産経新聞 HDだ。これは、本当に紙面が読めるので、結構すごくて感動した。有料になったら、多分読むのをやめてしまうけど、他の新聞も対応してくれないかな。

日経電子版は、試していないけど(月4000円の壁)、残念ながらFlashで動くようなのでiPadでは読めないだろう。余談になるけど、AppleAdobeは、昔は仲が良かったけど、最近はFlash問題を筆頭に、あんまり連携とれていないように思える。

海外の新聞では、Financial Times iPad EditionNYT Editors' Choiceがよくできていると思う。

どちらとも、実際の紙面がiPad上で見れるという上記産経新聞のタイプとは違うのだが、ウェブ記事を実際の新聞のような感じの段組レイアウトで見る事ができる、という点に特徴がある。FTの記事はけっこう読みやすく、けっこう気に入っている。願わくば、ソーシャル・メディアへの投稿が気軽にできるとありがたいのだが、とりあえず、眺めるだけでも随分楽しい。

iPhoneとは全くの別物なので、iPad対応アプリが必ず欲しくなる

個人的には少し意外だったのだが、iPhoneアプリの多くは、iPadではあまり使い心地が良くないということ。

iPhoneアプリのうち、iPadに対応していないものは、iPadで起動するとiPhoneのままの画面のサイズで起動する。これを、縦横2倍に拡大して、iPadの画面サイズに合わせることができるのだが、決して見やすくない(もともとiPhoneの解像度を想定して作っているのだから当たり前だけど)。

ソフトウェアキーボードも、iPhoneのままなの形式になるので、あんまり使いやすくない。

また、画面が広くなると、それにあった画面構成というものがあるようで、iPhoneの想定で作られたものを拡大するだけだと、どうしてもちぐはぐな印象を持ってしまう。

だから、どうしても必要な時以外は、iPhoneアプリで、iPadに対応していないものは使わなくなってしまう。

私にとって必須のソフトはおおよそ移植が完了しているので、あんまり気にならないのだが、それでも中には、Remember the Milkのように、必須ソフトでありながら移植してくれていないものもあって困っているものもある。

ビジネス系/Lifehack系のソフトは結構揃いつつある

EvernoteDropboxのように、“クラウド”を活用したソフトは迅速にiPad対応がされており、それぞれいい感じに仕上がっている。メモや仕事のフォルダを丸ごと持ち歩けることの利便性は高い。

また、Good Reader for iPadは、読めるだけじゃなくて、色々操作が出来るので便利。

Appleは、iPad用にわざわざiWorkPagesNumbersKeynote)を用意しており、これがなかなか。まだ、本格的に使って作業をしていないので、詳しい感想は書けないが、Mac環境がメインの人にとってはかなり環境は整っているといえる。

しかし、私のように、職場のPCがWin環境なせいで、WordとExcelをメインに使うという人は、Office2 HDをを買う方がベターかもしれない。DropboxGoogle Docsにも対応している。

PowerPointについても作業をする事が必要という場合は、iPhone版にもあるQuickoffice Connect Mobile Suite for iPadが出てきたので、いずれは使えるようになるかもしれない。しかし、現状ではどうやらこちらは日本語に対応していないらしく、まだ難があるようだ。

個人的に一番嬉しかったのは、iAnnotate PDFというソフト。このソフトは、PDFに、マーカーを引いたり、メモを取ったりすることができる。一部、PDFが正しく表示されないなどの不具合もあるが、概ね使える。

仕事で、読んでおきたいPDFをDropboxのフォルダーに溜めておき、それを読みながらマーカーを引いていく、という作業ができる。仕事上、色々な報告書やら論文やらをPDFで貰ったり入手したりすることが多く、それをいちいち印刷しているときりがない。かといって、MacBook Proを持ち歩いて読むというのも正直しんどい。そんなとき、このソフトがあることによって、iPad上で充分読み、そしてマーカーなどの形で自分の思考の跡を残しておくことができる。

iPadを買ったらやりたいことの筆頭に挙がっていたことなので、このソフトがあることは非常にありがたい。

Twitterとか

Twitterクライアントは、意外なことにまともにiPad対応しているものがまだ少ない気がする。

iPhoneではEchofonを使っていたのだけれど、iPadでは、Osfoora HD, for Twitterを使うようになった。私はヘビーなTwitterのユーザーではないので、とりあえずのところは満足している。

Twitterも、やはり画面が大きいと見やすいもんだ。複数のリストを一度に見る、とか、もう少し広い画面を使っていろいろできそうな気もするけど。

RSSリーダーも、iPhoneではBylineを使っていたのだけれど、iPadではNewsRackを使っている。大きな不満はないが、なんとなくしっくり来ないものがある。

RSSリーダーにおいては、やはり実際のページを読み進めたときに、画面が大きいというのは、iPhoneと比較して圧倒的な利点だ。

3GかWiFi

買う前に随分と悩んだのだけれど、最終的には3Gモデルにした。

MacBook Pro用に、EmobilePocket WiFiを使っているので、3Gにする必要はあまりないのだが、非常時用とGPS付き(Wi-Fiモデルは付いてない)という意味で、3Gにして、かつ料金形式はプリペイドにした。

もし、モバイル用のネット接続サービスを何も使っていない状態であれば、あまり迷うことなく、3Gで、毎月の定額制を選択したように思う。iPadの真価はネットに接続できることで発揮されるので、なるべく常時接続ができるような環境を確保するのが良い。iPadを自分が使う環境で、用意にWi-Fiに接続できる場所が多いならWi-Fiモデルでも結構いけると思うが、そうでないなら3Gモデルの方がオススメかもしれない。

その他、ちょっと感動したもの

色々なアプリが出始めているけれども、感動したのは、Star Walk for iPad元素図鑑

Star Walkは、プラネタリウムソフトなのだけれど、空に向かって傾けると、そちら側にどういう星座が見えるはずかをきちんと表示してくれる。「らしい」BGM付きで、色々な情報(日の出・日の入、月の満ち欠け)も観れる。適当に動かしているだけでも楽しい。

元素図鑑は、名前の通り、各元素を説明したデジタル図鑑。各元素について、関連のあるモノが映像で紹介されている他、2ページ目に、ちょっとユーモアのある説明が書いて有り、これを各元素について適当に読んでいるだけでも結構面白い。

両方とも、iPadというものの特徴を活かして、今までに無い領域を切り開いている。機器の発展が、その上に乗るソフトウェアの発展によって、より能力を発揮しているという好例だと思う。