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気候安全保障

既に先週の段階で話題になっていたが、国連安保理において、4月17日、イギリスが気候変動を議題として取り上げようとしているそうだ。

Planet Ark
UN Security Council to Debate Climate Change

いつの頃からだったか正確には忘れてしまったが、たしか2,3年前、おそらくグレンイーグルスのサミットのあたりから、イギリスは"Climate Security"(気候安全保障)という言葉を使用してきている。これは、気候変動問題を安全保障上の脅威として位置づけることによって、国際社会におけるこの問題の問題としての位置づけを上げようという動きであるようだ。

今回の動きも、おそらくその一連の外交努力の一環ということが言えるだろう。

イギリスの意図するところの気候安全保障が、気候変動問題が紛争等の原因となることを指摘して、安全保障上の脅威であるということで、問題の政治的な位置を引き上げることだけを意図しているのか(Homer-Dixonが展開していたようなenvironmental scarcityから来るsecurity問題)、それとも、既存の安全保障概念そのものの拡張を狙ったもの(過去の例としてはHuman Security(「人間の安全保障」)みたいに)なのか、その辺はよくわからない。

上記のPlanet Arkの記事では、イギリスが、気候変動が世界の安全保障に影響を与える分野として、

  • border disputes(国境紛争)
  • migration(移民)
  • energy supplies(エネルギー供給)
  • other resource shortages(他の資源不足)
  • societal stress(社会的な軋轢)
  • humanitarian crises(人道上の危機)

の6つの分野がある、と主張しているところを見ると、どうやら現段階では前者のようではある。「安全保障」といえばまじめになる(?)アメリカを議論に引き込むため、という意味合いも多分にあるだろうから、そこがメインになるのは当然の流れかも知れないが、ただ、以前にイギリス大使館で行なわれたセミナーで、政府代表の方が説明されていた説明では、後者に近いような印象を受けた。

国内でも、長期における大幅CO2削減を法制化する動きがあるなど、イギリスは気候変動問題にかなり本気で取り組み、かつ外交上、自ら引っ張っていく意志が見える。正直、なんでイギリスがそんなにやる気なのかわからない部分もあるのだが、その能動的な姿勢は日本も見習うべき部分があるように思う。

この気候安全保障という概念は、少なからず関心を呼んでいるようで、日本でも、環境省の「気候変動に関する国際戦略専門委員会において、現在、この概念をテーマとした検討が行なわれている。前2回を傍聴しているが、そこで交わされている議論は、昔、私が勉強をしていた分野に近い話がたくさんできて、とても懐かしい反面、こんな学術的な概念の議論でいいのかしらんとちょっと思ったりもする。

日本として無理にこの概念を活用する必要があるかどうかは、正直、今の段階では疑問符が付くのだが、こうした概念をうまく使っていくことの重要性は、今後のイギリスの動向と共に見守っていきたいと思っている。