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福田総理の施政方針演説

温暖化 国際交渉 国内政策

先週18日の話になるが、福田総理が国会で施政方針演説を行なった

その演説の中で、福田総理が気候変動の問題についてどう言及したかをちょっと見てみる。

まず冒頭、他の諸問題と共に地球環境問題を真摯な取り組みが必要なものとして位置づけた後、

  • 生活者・消費者が主役となる社会を実現する「国民本位の行財政への転換」
  • 国民が安心して生活できる「社会保障制度の確立と安全の確保」
  • 国民が豊かさを実感できる「活力ある経済社会の構築」
  • 地球規模の課題の解決に積極的に取り組む「平和協力国家日本の実現」
  • 地球温暖化対策と経済成長を同時に実現する「低炭素社会への転換」

の5つを基本方針として挙げている。

直接的に気候変動問題(地球温暖化問題)について言及しているのは5番目で、だんだん市民権を得つつある「低炭素社会」という言葉を使用している。

これ以降、それぞれの基本方針についての説明が始まるのだが、気候変動については、5番目の基本方針に辿り着く前になんどか登場する。

すでに、最初の「国民本位の行財政辺ての転換」において、

道路特定財源については、厳しい財政事情の下、地域の自立、活性化に役立つ道路の整備事業は、真に必要なものを、効率化を徹底しつつ行います。道路の維持・補修や、救急病院への交通の利便性の確保、都市部の渋滞対策、開かずの踏切の解消など、国民生活に欠かすことのできない対策は実施しなければなりません。さらに、地球温暖化問題への対応を行うためにも、現行の税率を維持する必要があります。これまでの特定財源の仕組みを見直し、納税者の理解を得ながら一般財源を確保してまいります。(強調は管理人)

という形で登場する。これは、今話題のガソリンに関する暫定税率を廃止するかどうかという問題に対する政府の立場を示したものである。この問題はもともと、上記引用にもある通り、道路特定財源の扱いをめぐる問題ではあるのだが、気候変動の観点から言えば、暫定税率を廃止すれば実質的にはガソリンの値段が下がるので、ガソリンの消費が促進され、CO2排出量の増加に貢献してしまうという事情がある。

政府の試算によれば、ガソリン税揮発油税地方道路税)と軽油引取税暫定税率が廃止された場合は、2400万トンのCO2排出量が増加するという(時事通信2008年1月18日)。2400万トンというのは、けっこう洒落にならない数字で、日本政府が政府として購入しようとしている京都メカニズムのクレジットによる削減がチャラになるくらいの排出量である。国内の排出量のパーセンテージにして2%近い(日本の目標は6%削減)。

炭素税研究会もほぼ同様の試算をしており、実質的なガソリンの値下がりは庶民の感覚としてはありがたいかもしれないが、気候変動対策の観点から見ればマイナスになることは間違いないようだ。

政府が税率維持を主張している背景は別にもあると考えられるが、税率を維持しつつ、一般財源化に言及し始めているのは良い傾向だろう。

少し話題がそれたが、この後も、いくつかの気候変動問題に関わる事項はいくつか触れられている。ただ、それらはやや細かいので飛ばすと、やはり最後の五番目、「低炭素社会への転換」において全体が語られている。少し長いが、全部引用しておく。


地球環境問題は21世紀の人類にとって最も深刻な課題です。一刻も早く、国際社会の協力の下に、全地球的規模で、温室効果ガスの削減に取り組んでいかなければなりません。我が国は、これまで、徹底的に省エネ技術の開発や導入を進め、世界最高のエネルギー効率を実現しました。こうした「環境力」を最大限に活用して、世界の先例となる「低炭素社会」への転換を進め、国際社会を先導してまいります。

そのためにも、まず自らが率先して、温室効果ガス6パーセント削減の約束を確実に達成しなければなりません。今年度中に京都議定書の目標達成計画を改定し、産業界の更なる努力に加えて、エネルギー消費が増加している民生部門の省エネ対策に、国民の協力も得ながら力を入れてまいります。

北海道洞爺湖サミットは、我が国の環境問題への取組を世界に発信する大きなチャンスです。2050年までに温室効果ガスの排出量を半減させる長期目標を、経済成長と両立しながら実現することを目指し、議長国として、すべての主要排出国が参加する実効性のある新たな枠組み作りを主導してまいります

地球環境問題に国際社会全体で取り組んでいく動きを後押しするため、途上国支援や環境被害対策、先端技術の開発といった各国共通の課題に対し、資金面はもちろんのこと、人的・技術的な面でも貢献していきます。志を同じくする途上国の温室効果ガス削減努力に対する支援や、干ばつ、洪水など、気候変動に伴う環境被害への対策を実施するための「資金メカニズム」を構築します。

我が国が有する世界最高水準の環境関連技術を、世界が必要としています。当面は、更なる省エネ技術の開発や、食料生産に影響を与えないバイオマス技術、燃料電池の実用化などの新エネルギーの本格利用に向けた取組を加速することが重要ですが、中長期的には、地球温暖化問題の根本的な解決に向けて、温室効果ガスの排出を究極的にゼロとするような革新的な技術開発を行わなければなりません。このため、「環境エネルギー技術革新計画」を策定し、これらの技術課題の克服に取り組んでまいります。

我が国を低炭素社会に転換していくためには、ライフスタイル、都市や交通のあり方など社会の仕組みを根本から変えていく必要があります。「200年住宅」の取組もその一環ですが、自治体と連携し、温室効果ガスの大幅な削減など、高い目標を掲げ、先駆的な取組にチャレンジする都市を10か所選び、環境モデル都市をつくります低炭素社会とはどのようなものか、どうすれば実現できるのかなどを分かりやすくお示しできるよう、有識者による環境問題に関する懇談会を開催することとしています。国民の皆様に低炭素社会を目指す運動に賛同をいただき、ご参加をお願いします。(強調は管理人)


今年はG8の議長国として、それへ向けて何か特別なことを言うかどうかが1つ注目をしていたところではあった。結論から言えば、それほどこれまでと変わったことは言っていない。ほとんど内容が、昨年安倍前首相が発表した「美しい星50」で述べられている内容の域は出ていない。

特に期待をしたかったのは、昨年の「美しい星」において、世界全体での排出量の半減の必要性を認めた日本が、その中で、日本としては中長期的にどのような削減を行なっていくのかという点であった。しかし、この点については、福田総理の演説はこれまでの日本政府の立場を繰り返すにとどまっている。

G8における議長国として、日本が議論をリードしていくためには、日本自身のやる気や覚悟を示す必要があると思うのだが・・・。

これに引き続き、今週半ばの23日から27日まで開催されるスイスのダボス会議(世界経済フォーラム)で福田総理はスピーチをする予定だ。ダボス会議は、例年G8の議長国が、自国の議長国としての方針を発表する場として使われるそうで、福田総理がスピーチでどんなことを言われるのかは注目したいところだ。