柔軟性メカニズムをめぐる国連交渉について

再度、勉強し始める必要が

震災後、仕事の中でエネルギー政策関連に割く時間が多くなったので、気候変動の国連交渉について割いている時間が相対的に少なくなってしまった。

自分がこれまで担当としてやってきた柔軟性メカニズムをめぐる国連交渉のフォローも、NGOの中での議論のとりまとめも、かなりサボってしまっている。

でも、今年もそろそろ秋口が見え、年末の国連会議がそろそろ見えてきているので、このままじゃまずい。

ということで、少し、自分の時間を使って、柔軟性メカニズムの最近の議論について勉強し直すことにした。ブログに、個人的に勉強したりまとめたりしたことをこちょこちょと書いていけば、頭の整理にもなるんじゃないかと期待している。

また例によって3日坊主で終わるかもしれないけど、ちょこっとずつ書いていくつもり。

柔軟性メカニズムの「種類」と議論の「場」

最初は、柔軟性メカニズムの「種類」と、国連交渉の中での議論の「場」の整理。

「柔軟性メカニズム」(flexible mechanisms)は、元々は、京都議定書の目標達成に柔軟性を持たせるために導入された3つの仕組みのこと。具体的には、クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)、(国際)排出量取引の3つを指す。これらは、温室効果ガス排出の削減量に経済的(金銭的)価値を付与する仕組みでもあるので、よく「市場メカニズム」(market-based mechanisms)とも呼ばれる。また、京都議定書で導入された仕組みだから、「京都メカニズム」(Kyoto Mechanisms)とも呼ばれる。

ところが、ここ数年では、「柔軟性メカニズム」や「市場メカニズム」と言った場合、これらだけにとどまらなくなってきた。

未だ構想・アイディアの段階でしかないが、「セクトラル・クレディティング・メカニズム」「セクトラル・トレーディング」「NAMAクレディティング」などの新しいメカニズムが、柔軟性メカニズムの一部として議論されるようになってきた。様々な国々が、それぞれの立場で提案をしている。有名なのは、EU、ニュージーランド、韓国など。

それぞれのメカニズムの特徴については次回以降に譲るとして、とりあえず上のと区別すると、これらは、「新しいメカニズム」(new mechanisms)と呼ばれたりする。これに対して、既にある京都議定書の柔軟性メカニズムは「既存のメカニズム」(existing mechanisms)と呼ばれたりする。

「既存」と「新しい」メカニズムは、ここ数年の国連交渉では違う場で議論&交渉されてきた。

既存のメカニズムは京都議定書の特別作業部会(AWG KP)で主に議論・交渉がされてきた。これに対して、新しいメカニズムは枠組条約の特別作業部会(AWG LCA)で主に議論されてきた。場は別々だけど、遅々として交渉に進展が見られないのはどっちも変わらない。

ここではあえて単純化しているけれども、現実には、2つの種類の議論の境界線は曖昧なので、厳密に分かれているわけではない。しかも、最近の交渉では、こういう議論の場の区別が当てはまらないケースも出てきているので、少し注意が必要だ。

また、言うまでもなく、両者の議論は密接に関連しあっており、各国代表団の交渉官は同じ人がやっていたりするケースが多い。

それぞれにいくつもの論点があり、なかなかに興味深い。

おいおい整理していきたいが、個人的な見通しを言うと、今年の年末の南アフリカ・ダーバンでの国連会議(COP17・COP/MOP7)では、この柔軟性メカニズムをめぐる議論は、全体の中ではそれほど重要視はされないと思う。そもそも、これの使用の前提となる削減目標の議論がおぼつかないからだ。

他方で、ビジネス関係者の中には、既存のメカニズムの2013年以降の扱いがどうなるかについて、やきもきしながら注目している人も一部いるはず。

まあ、そういう話もそのうちに。