梅田望夫 『ウェブ進化論−本当の大変化はこれから始まる』 ちくま新書 2006年
- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/02/07
- メディア: 新書
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インターネットの世界では色々な変化がわずかな時間の間にたくさん起きているように見える。そうした個々の変化の事情に詳しい人はたくさんいるだろう。しかし、その変化が何を意味し、そしてこれからどういう変化につながっているのかを「解釈」することは、けっこう難しのではないだろうか。
この梅田氏の著書は、みずからが用意したキーワードを用いて、そうしたことに試みている点に好感が持てる。
著者の基本的な主張は、「インターネット」と、それが可能にする「チープ革命」、そして、Linuxに代表される「オープンソース」という「三大潮流」が、「次の十年」に大変化をもたらすということである。
これら3つのキーワードを核としつつ、Googleのような検索エンジンの役割、「ロングテール」現象やWeb2.0が意味することの解釈、オープンソース現象がもtラスものなどが語られる。
私がネットでの動きにそれほどちゃんとついていけてないだけかも知れないが、若干、楽観主義すぎるなとか、ハードが持つ役割やそこでのコスト(本書の表現で言えばネットのあちら側にたいするこちら側)をちょっと軽視しすぎなんではとか思ってしまうところもあるが、ネットの世界で起きている変化に大掴みでも解釈を与えている点において、非常に楽しく読むことができる内容だった。
中でも、ロンテール現象は面白かった。私は、不勉強にしてロングテール現象という言葉自体、本書を読むまで知らなかった。ロングテール現象とは、Amazonの売上の無視できない部分が、商品ランキングで言えば13万位以下の恐竜のしっぽにあたる部分から得られているということを指しており、通常では「売れない商品」であるはずのものが、ビジネスモデルの中で重要な役割を果たしていることを指すらしい。
こうした、本来であれば取るに足らぬ大多数に属するはずのものが、ネットに特性によって大きな役割を果たすというのは、様々な分野において、統合が進んでいる現実の産業と好対照をなしていて、興味深い。
人でも都市でも産業でもエネルギーでも、巨大化・中央集権化が起きているような印象を私は今の社会に関して持っているのだけれど、ネット社会でのこのようなモデルが、現実世界に対してもなんらかのヒントを与えてくれるのではないかと、少し期待が膨らんだ。
もっとも、著者が指摘するように、玉石混合で、「石」の割合が圧倒的なネットの世界において、「玉」をつまみ出す作業というのは、本書の中で指摘される程、自動化が進み、可能になっていくのかどうかは、多少疑問がある。ロングテールのしっぽの部分から、何かがつまみ出されるかどうかは、ひとえにその部分にかかっているのだから、本書で言う大変化が起きるかどうかは、そこの部分の正否にかかっているといっても過言ではない。
ともあれ、ロングテール以外にもいろいろなヒントをくれた本であった。