田島弓子『ワークライフ”アンバランス”の仕事力』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2008年

ワークライフ“アンバランス”の仕事力

ワークライフ“アンバランス”の仕事力


最近のビジネス書の傾向としては、「仕事一辺倒」ではなく、残業することをよしとはせず、プライベートも充実させて、いかによりよく生きるかを説く本が多いように感じる。

そんな中で、題名にワークライフの"アン"バランスを掲げる本書は、一見そうした潮流とは一線を画しているかのように見える。

キツイ仕事にのめり込む方法を書いていたり、「気合い」と「集中」の話について述べているあたりなどは、昔ながらの仕事人間になることを勧めているともとれるし、本書全体のバランスとしても、仕事に重点が置かれているのは明らかである。

しかし、本書が説いているのは、生活のうちの仕事という部分において、いかにそれに「自分の意志で」=「自分でコントロールをして」のめり込むかのための姿勢であり、生活の全てを注ぎ込んで企業戦士になれと説いているわけではない。

むしろ、目的意識や計画性の欠如したダラダラとした仕事や残業のやり方には否定的である。あるくだりでは、メリハリを付けることの大切さを説明するための例として、著者自らがかつて実践したサボりについて暴露したりもしている。

勝間和代氏などの著書や、そして数多あるライフハック本を読んで見つつも、今ひとつ、そうした器用で効率性の高い仕事のやり方に自分はうまく移行できる自信のない人が読むと、なんとなくフィットするところがあるのではないかと思う。

本書を読みながら、私自身の仕事を振り返ってみると、メリハリの付け方が下手で、時として惰性で残業をしてしまったり、休むべきところで充分に休息をとらなかったりして、却って生産性が落ちているときなどがある。かと言って、本書が言うようなアドレナリンが噴き出すようなワクワク感の中で仕事をしているのかといえば、決してそうではないので、自分の中途半端さ加減が見に染みる内容だった。

本書で特に印象に残っているのは、
苦労や失敗が「濃い経験」になることを書いている部分だ。

著者曰く、

「単に「大変だった」と思うだけで終わっている人は、・・・大変だった自分の気持ちが苦労話のポイントになってしまいがちです。

他方、苦労を「濃い経験」として受けとめ、そこから何かを得ている人は、・・・話の焦点が、個人的な気持ちではなく、業務における障害をどう克服したかということに向かっています。」(p.55)


とある。これは、耳が痛い話で、私自身、前者になってしまっていることがあるなあと思った。

本書で何度か強調される、自分を成長させる「濃い経験」というのを、どれほど意識的に得られるようにするのか。同じワークライフの"アンバランス”に結果としてなるにしても、それが重要だということだ。